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最高裁判所第一小法廷 昭和48年(オ)796号 判決

上告人

市葉たき子

右訴訟代理人

景山収

糸賀了

被上告人

佐藤信太郎

右訴訟代理人

竹内一男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人景山収、同糸賀了の上告理由(一)について。

不動産につき贈与を原因とする所有権移転仮登記がなされているにとどまるときは、仮登記権利者が当該不動産の所有権を取得したことはもとより、当該不動産の贈与を受けた事実についても、仮登記の存在のみによつてこれを推定することをえないものと解するのが相当である。

所論指摘の原審の認定判断は右と同旨の解釈に基づくものであつて、もとより正当であり、所論指摘の各判例はいずれも本件に適切でない。所論は独自の見解に立脚するものであり、論旨は採用することができない。

同(二)について。

原判決(その引用する第一審判決を含む。)挙示の証拠によれば、所論指摘の点に関する原審の認定判断はこれを肯認することができ、原審が本件建物賃貸借契約の解約申入についての正当事由の判断に際し上告人側の事情を無視したということはできない。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(藤林益三 大隅健一郎 下田武三 岸盛一 岸上康夫)

〈上告理由省略〉

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